リベラルアーツ英語検定クイズ英語の不思議 > 2016年02月18日更新分(1/1)

《第39問》
再帰代名詞に「所有格+self」と「目的格+self」があるのはなぜでしょうか。

正解

不正解

解説

  self は古英語では(代)名詞の意味を強めるために使われていました。現代英語に self-same 「全く同じの、同一の」が見られますが、これは「強調のself」の名残です。
  古英語から中英語にかけては、代名詞のみで再帰代名詞の役割も可能でした。例えば、He killed him. は(1)「彼が(他の)彼を殺した」の意味にも、(2)「彼が彼自身を殺した」(=「自殺した」)の意味にも解釈できます。しかし、二通りの解釈が可能であるということは、情報伝達の面からみれば、極めてあいまいな表現となります。従って、(2)の解釈をするために、「同じの」を意味する形容詞 self を付加させることで、意味の明確化をした結果、 him + self という構造が生じたのです。
  ところが、古英語から初期中英語にかけて語尾変化の消失が起こり、語と語の統語的・意味的関係を語尾変化で表すことができなくなり、語順が意味決定の重要な要素となりました(第38問の解説を参照)。これにより、「形容詞 + 名詞」の語順が確立しました。このような言語的変化から、「him + self」における self が形容詞から名詞と分析されることになりました。この結果、self が名詞なら所有格を用いてもよいと解釈されて、「my / your / our + self」(our self は後に our selves)が使われるようになりました。従って、歴史的には「目的格+self」が先であり、「所有格+self」は後から作られたことになります。
  しかし、英語には herself と itself という再帰代名詞があります。これらは「目的格+self」なのか「所有格+self」なのか形の上では不明です。つまり、 her は目的格と所有格が同形であり、 it は主格と目的格が同じです。OED では、この herself のあいまい性から、現代英語では「目的格+self」と「所有格+self」の二つの再帰代名詞が存在すると説明されています。
  このように考えると、厳密には、現代英語には「目的格+self」、「所有格+self」、「her+self」、「it+self」の4つの型が存在することになります。

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