リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2015年06月11日更新分(2/3)

《第41問》
フランコ・ゼフィレーリ監督の映画(1968年)で、僧ロレンスを演じている俳優はだれか?

正解

不正解

解説

アイルランド出身の俳優ミロ・オーシャ(Milo O’Shae,1926-2013)は、1960年代初期頃から映画界でも活躍するようになった俳優。彼は、ゼフィレーリの『ロミオとジュリエット』が製作された同じ年、当時にしてはややエロテックで過激な『バーバレラ』(1967年)というハリウッド・コメディに、主人公バーバラを性の快楽によって殺そうなどと目論むデュラン・デュランという滑稽な狂人博士の役で登場し、人気を博していた。また、同じ頃、英国でも、BBCの連続コメディー『ミー・マミー』に、バンジーという主役として登場し、お茶の間の道化としてその存在感を確立していた。
 また、ジェイムズ・ジョイスの小説を映画化したジョゼフ・ストリック監督の『ユリッシーズ』(1967)でブルームの役を演じ、ブロードウェイで上演されたチャールズ・ダイアー作・バリー・モース監督の芝居『階段』(Staircase,1968)では、当時の舞台では異色の存在であったゲイの主人公を演じていた。英国を中心とする英語世界において「異質」であったアイルランド人としての存在感と、彼の特徴的な顔立ちが、こうした役柄に相応しかったのだろう。

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オーシャーをロレンス役に抜擢したゼフィレーリ監督は、シェイクピアの描くこの修道士に、オーシャーの人物像が放つ喜劇性と異質性の入り混じった独特のオーラを感じ、それを表現しようと目論んだのかもしれない。既に述べたように、『ロミオとジュリエット』の描くヴェローナという近代的法治国家では、古い宗教的道徳の象徴たるカトリック修道士の存在は異彩を放っている。また、カトリック教が初演当時のイングランド社会において(少なくとも表向きには)「異教」と見做されていたことから、当時の芝居には、修道士を嘲弄の的として描く傾向が窺えた(Joseph S. Kennard, The Friar in Fiction, New York: Brentano's, 1923, pp. 95-109に詳しい)。『ロミオとジュリエット』の本文のみから、修道士の道化的特質性を解明してゆくのは困難であるが、もしかすると、初演では、道化役者がロレンスを演じるなどの工夫が凝らされていたのかもしれない。(十八世紀の伝説によると、シェイクスピア自身がロレンスを演じたというが、それは分からない。)いずれにせよ、ゼフィレーリの映画では、ロレンスの配役に捻りが加わっていると考えてよいだろう。
 なお、当時マギー・スミスを妻とし、正統な舞台俳優としてその名を馳せていたロバート・スティーヴンスは、本作品では法の番人であるエスカラスを演じている。英国を代表するシェイクスピア俳優ローレンス・オリヴィエは序詞役として、その音楽的で麗しい声のみ出演している。

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