リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2014年12月18日更新分(1/3)

《第10問》
次の登場人物の中で『ロミオとジュリエット』の材源となっているブルックの物語に登場しない人物は誰か?

正解

不正解

解説

『ロミオとジュリエット』では、マキューシオという人物を創造することで、シェイクスピアは様々な劇的効果を狙っていると考えられる。そもそも、芝居があるレベルでロミオの心を支配する brawling love ないし loving hate なるオクシモンを描こうとしているならば、劇中でマキューシオの果たす役割は大きいと考えられる。

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シェイクスピア時代の作家達は材源を自由に改変して自分の物語を織なすが、時には、材源には登場しない人物を自由に創造することもある。それらは作家の意匠に迫る読みの糸口ともなりえる。
 『ハムレット』に出てくる亡霊などはその典型的な例で、シェイクスピアの芝居では非常に大きな役割を担っているにもかかわらず、材源には出てこない。ちなみに、材源では、ハムレット(アムレス)は、叔父による父の殺害の一部始終を目撃した上で、狂気を装い、復讐の機会を待つ。一方、シェイクスピアの『ハムレット』では、叔父による父の殺害は、その言葉の信憑性が疑わしくも思える亡霊によって告げられる。つまり、ハムレットには、亡霊の言葉を信じるべきか否かさえ分からないのだ。それゆえに、ハムレットの心の中に、亡霊をその根拠とすべきか否かというあの苦悩に満ちた問いかけが起こる。
 『ロミオとジュリエット』では、マキューシオという人物を創造することで、シェイクスピアは様々な劇的効果を狙っていると考えられる。そもそも、芝居があるレベルでロミオの心を支配する brawling love ないし loving hate なるオクシモンを描こうとしているならば、劇中でマキューシオの果たす役割は大きいと考えられる。第二幕までのロミオは、愛と平和を重んじようとする人物として描かれ、その心に宿る「いにしえの遺恨」なる情緒は姿を見せない。親友であるマキューシオの死が発端となり、その遺恨が極めてヴィヴィッドに描かれることになるのである。
 さらに付け加えると、既述したように、マキューシオは大公と血を分けた貴族であり、本来はモンタギューでもキャピュレットでもない。そうした人物が、両家の確執の中に存在することで、右と左という二項対立が芝居の幕開けからすでに破綻していたようにも見える。また、この芝居が喜劇的ピッチから悲劇的ピッチへと急変するのも、第三幕第一場のマキューシオの死がその境となっている。こうしたことから考えて、この人物が、オクシモロニックな劇世界の演出に重要な役割を担っていることは間違いない。

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