リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2015年08月20日更新分(3/3)

《第57問》
1750年にコヴェント・ガーデン劇場及びドゥルーリー・レーン劇場においてかけられた二つの『ロミオとジュリエット』(問題56)に関し、それらの登場人物達の衣装について述べた文として正しいものはどれか?

正解

不正解

解説

十八世紀の上演では、同時代に流行していた衣装が用いられるのが一般的であった。ギャリックとバリーの衣装については、問題58の解説で触れた二枚の絵(ベンジャミン・ウィルソンの絵画とR. パイルの絵画に基づくウィリアム・エリオットの版画)が、もちろん当時の舞台衣装を正確に再現するものではないが、そのおおよその趣向を今日に伝えている。ロミオを演じるこの二大俳優は、二人とも、長いチョッキの上に膝までかかるコートと膝にかかる長さの半ズボン、そして鬘を身につけているが、これらは十八世紀を代表する装束のアイテムである。また、エリオットの版画でバリーが手に持っている三角帽も十八世紀に流行したものである。

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シェイクスピアの舞台で使用される衣装に微妙な変化がみえるようになったのは、十八世紀末であった。しかし、『ロミオとジュリエット』にその変化の影響が現れたのは、1841年にチャールズ・マックリーディ(William Charles Macready, 1793-1873)がコロネル・スミス(Colonel C. H. Smith)という人物に描かせた衣装計画(イリノイ大学図書館所蔵、C. H. Shattuck ed., The Shakespeare Promptbooks, University of Illinois Press, 1965, p. 414, no 19)が最初である。1820年頃から歴史的な衣装への関心を示し、彼の手がける他のシェイクスピア劇の上演においてそれを露にしていたマックリーディは、『ロミオとジュリエット』でも、同時代の衣装ではなく、十三世紀に流行したヴェローナの衣装で人物を登場させる計画を練っていたのである。
 マックリーディのこの計画は実現しなかった。しかし、十九世紀後半から二十世紀初頭までの上演史を紐解くと、そこには彼の影響が色濃く窺える。ギャリックとバリーの時代には同時代に流行した衣装、マックリーディとその後継者達の時代には物語世界の歴史的な背景を感じさせる衣装が、演劇の都ロンドンにおける『ロミオとジュリエット』の舞台を飾っていたと考えられている。
 ちなみに、シェイクスピア時代のイギリスを思わせる衣装を使った『ロミオとジュリエット』の上演は、第一次世界大戦の頃にようやく見られるようになった。

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